松本 水物語

岡田地区 六助池 日本スケート界の夢を結んだ氷

水のまち松本も、かつては全ての地域が水に恵まれていたわけではなく、特に北部の女鳥羽川の段丘上に位置する岡田地区はことさら水に恵まれず、田溝池、塩倉池など、かんがい用ため池がいくつも築かれ田畑を支えてきました。
松本市街地から北へ四賀地区や安曇野市に抜ける国道143号線をしばらく進むと「六助池」という信号の左手に現れる周囲300メートルほどの、「六助池」もそのひとつです。

【写真】六助池(今)−「学生スケート大会発生の地」の碑

自動車で走ると信号機に注意が集中し見落としがちですが、この池の東岸には写真のような石碑が建っていて、裏面には『この六助の池は大正十四年一月六・七日 はじめて学生スケート大会を開催した由緒の地である』という文が刻まれています。
一見すると「なぜ、こんな池で?」と首を傾げたくなるロケーションですが、その経緯は、……



【写真】六助池(昔)−アイスホッケー大会

当時産声をあげたばかりの我が国競技スケート界を実質牽引していた学生有志の熱意により、大正13年1月に下諏訪町で、早稲田大学、東京帝国大学、慶應義塾大学、松本高校(現信州大学)の4校で日本初のアイスホッケー対抗試合が行われ、その勢いで全国学生氷上競技連盟が組織されました。翌14年、同じ諏訪湖で記念すべき連盟主催の第1回公式大会開催を予定していたのですが、不運にもその年はあいにくの暖冬、肝心の諏訪湖が結氷せず、慌てた競技連盟が八方手を尽くして探し当てた代替“池”が、暖冬に関係なく山陰で毎年厚く結氷する松本高校氷滑(スケート)部のホームゲレンデ「六助池」だったという訳です。

この大会には全国から七校が参加、スピード競技は実施されませんでしたが、フィギア、アイスホッケーの2競技が行われ、フィギア競技は東京帝国大学が、アイスホッケーは早稲田大学が決勝戦で地元松本高校を破り、それぞれ記念すべき第1回の優勝校となりました。

【写真】かつてのアイスホッケーの選手たち

学生大会の会場は翌年から小海町の「松原湖」に移り、六助池には再び競技会が開催されることはありませんでした。しかし、第1回大会成功に気をよくした競技連盟は翌年国際スケート連盟に正式加盟し、その3年後には日本スケート連盟が発足、更に3年後、アメリカレークプラシッドで行われた第3回オリンピック冬季競技大会に日本は初めて選手を派遣するに至ったのでした。

六助池は松本トンネル開通工事等に伴い現在は大会が実施された2/3の規模なり、ますます80年前ここで第1回学生スケート大会が開催されたことは石碑以外面影を偲ぶことは難しくなりましたが、この小さなかんがい池の氷が、わが国競技スケート界の普及に尽力したパイオニア達に、その夢の実現に果たした役割は計り知れないものがあったことでしょう。

現在でも、日本学生氷上競技選手権大会(インカレ)のプログラムには歴代開催地最上欄に「第1回 長野県六助池」の名が誇らしく載っています。


六助池の地図はこちら

市民記者:大沢
【一言コメント】
六助池でスケート大会が行われた時期、東京では二年前発生した関東大震災での復興で混乱していた時期でした。80年経過した現在、当時のことを知っている方とは、お会いすることは出来ませんでしたが、この取材をしている時が丁度トリノ五輪の時期と重なり、スケート競技で世界の強豪と互角にメダル争いをする日本選手達の姿をテレビで見ながら、彼らが今活躍できる礎を築いてこられた人々の熱意伝わってくるようで、何とも感慨深いものがありました。

また、無理をお願いして当時の貴重な写真を御提供下さった「あがたの森記念館」関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。


岡田地区 六助池 日本スケート界の夢を結んだ氷” への1件のコメント

  1.   えむこさんより

    5月23日のくまさんの書き込みをみてお稲荷さんの記事を見ました。
    面白い記事と思いましたが
    岡田地区の「六助池」の裏山にもお稲荷さんがあるのを思い出しました。
    市内から安曇野方面に車で向かうとき「六助池」の横を通りますが
    今回、調べてゆくうちにこの記事を目にして思わぬことからまた松本の歴史の一端を知りました。
    この「六助池」もともとは農業用の溜め池として作られたようですが
    「日本学生スケート大会発祥の地」という栄誉を持つ池で
    松本高校の学生がスケートの練習をしていたり、ましてや全国大会が開催されたなどとは
    今となってはとても想像もできませんが池畔に「学生スケート大会発祥の地」の碑が建つのを目にしていました。
    この池の裏山に、「六助稲荷神社」が鎮座することは
    さらに知られていないのではないかと思います。
    参道を登ってゆくと「六助稲荷神社」に到着します。

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