女工哀史で知られる野麦峠は標高1,672m。長野県と岐阜県の県境にあります。
奈川地区から野麦峠の展望台まで、遊歩道を散策しました。
松本市作成の遊歩道マップでは15.野麦峠遊歩道と紹介されています。
奈川地区の集落を抜けてしばらくすると、道路は木々の間を走ります。川も護岸されていない自然の流れです。


遊歩道入り口には、標識杭や「あゝ野麦峠」の碑や「旧野麦街道」の説明看板などがあるので、すぐに分かります。付近には自動車10台程を駐車できる場所もあります。
大まかなに歴史や街道の物語りを確認して登り始めます。


(画像をクリックすると、大きくなります。)


しばらく緩やかな道が続きます。野草、花、鳥のさえずりなどを楽しみながら、落ち葉でふかふかになった道を進みます。
最初の休憩地点には、きれいな冷たい水が流れていました。ベンチに腰掛けて一休みです。水場があるのはこの1箇所だけですが、峠までの全4箇所に休憩用のベンチが設置されています。

少しずつ勾配が増します。オダマキをはじめ、様々な花が咲いています。陽に透ける葉の美しさにも癒されます。秋もきっと美しいことでしょう。
中腹に唐松林から雑木林に変る地点があります。雑木林には大きな大きな檜(ヒノキ)、ブナ、カエデなどが見られます。ここを行き交う人々を見守ってきたのでしょう。
所々に設置されたいすに座り、緑深い林の中に身を置いた時、静かに流れてきたその年月を思わずにはいられません。


唐松林のパノラマ画像です。
女工さん達や旅人の安全を祈り、亡くなった方々を慰める石仏が柔和な表情で座っていらっしゃいました。


鳥のさえずりと一緒にエンジン音が聞こえ始めます。国道に出ると岐阜県との県境です。



「お助け小屋(食事・お土産・宿泊)」や「野麦峠の館(資料館)」があります。この地籍は“岐阜県高山市高根町野麦峠“です。野麦峠の館の屋根は、絶好の展望場所です。北西方向には雄大な乗鞍岳が見えます。乗鞍の“双峰の鞍型”がはっきりと見えました。
(登り:約1時間30分。休憩をたっぷりとり、ゆっくり登りました。)
展望台からのパノラマ画像です。
「あゝ野麦峠」でも描かれた政井みねさんとお兄さんの像です。岡谷の製糸工場で働き、病気になったみねさんをお兄さんが背負って連れ帰る途中のここで、みねさんは亡くなったそうです。

お助け小屋の脇から入るハイキングコースの高台には、「政井みねの碑」があります。みねさんや女工さん達を偲んで観音様も寄贈されています。「ああ、飛騨が見える」という言葉が大変印象的です。お助け小屋や野麦峠の館には、みねさんの写真があります。
ハイキングコース高台からのパノラマ画像です。
ハイキングコースの下りは、背丈ほどの隈笹を掻き分けて進みます。途中、だてかんば林、鏡池を抜け、野麦峠の館の裏に戻ります。
鏡池には池の主でしょうか、大きな鯉が住んでいました。小さな白い花はサクラ草科のツマトリソウです。レンゲツツジの鮮やかなオレンジ色も緑に映えてとてもきれいでした。




野麦峠の館(資料館)は、野麦峠に関係の深い女工哀史や飛騨の労働と生活に関する資料が展示されています。また、これらを四季折々の風景とともに紹介する映像も見られます。(入場料:500円)
館内で説明をして下さった館長さんから、野麦地域の歴史や製糸業が栄えた当時(明治30年代頃から)の様子を伺いました。優しい語り口調でしたが、歴史を伝えることへの強い使命感を持ち、故郷を慈しみ誇りにされていらっしゃるように感じました。素敵な方に出会えました。

「野麦」とは”隈笹の穂”のことで、穀物が実らない大不作の際(50年に一度程)に穂(実)が出るのだそうです。昔はその穂(実)で飢えをしのいだそうです。穂が出るとは、驚きでした。
※隈笹:イネ科の多年生植物
旧野麦街道はブリ街道とも呼ばれ「岐阜県、野麦峠、奈川、島々、波田、松本、塩尻、岡谷(製糸工場)」と続いています。
野麦地域からは約120km、女工さんたちは3泊4日で歩いていたそうです。(出発地により異なります)
製糸業は明治30年代頃から岡谷地域で始まり、栄えました。国策の柱として輸出に多くの外貨を稼ぎ出しました。
当時、岡谷地域には大小270余りの製糸工場は輸出量は日本随一で、どこの工場でも人手不足だったそうです。この野麦峠を越えた飛騨高山の女工さんたちが有名ですが、山梨県、群馬県、新潟県、石川県などや長野県内でも伊那・飯田、塩尻、松本、大町、木曽など多くの地域からも働きに出ていたそうです。山梨県からの女工さんが一番多かったそうです。
また、労働環境の厳しさや悲劇ばかりだったとの誤解も多いですが、
- 人手不足が故に女工さん探しの工場担当者が出向いた訳で人身売買ではない
- 日本の一大産地としての輸出量を確保する故に仕事量が多かった
- 飛騨の場合は農業以外の産業に乏しく冬場の現金収入が少なかった
- 製糸工場で収入が貴重だった
- 片倉製糸工場では女工さん達へ教育(礼儀作法など)を施し”嫁にするなら片倉の娘”と言われた
- 勤続年数の長い女工さんへは表彰状と賞品が贈られた
- 女工さん達が写真館で撮影した写真や故郷からの恋文などから青春を謳歌していた様子
- 長寿(80・90歳以上、最高齢は105歳)だった方も多くいらっしゃった
などなど、貴重な写真や資料(恋文も)と共にお話を伺いました。
私たちの生活に近い歴史・文化から、色々に学ぶことが出来ます。大変感慨深い内容でした。
復路・下りは、来た路を戻ります。正午過ぎの一番暑い時間帯でしたが林の中は快適、ぐんぐん進みました。
(下り:約45分。)
大変歩きやすい遊歩道でした。皆さんもぜひ歩いてみて下さい。
機会があれば、岐阜県側の「旧野麦街道」も歩いてみたいものです。
参考:高根村観光開発公社
※松本市街地から奈川渡ダムに向かうトンネルは、トンネル内で左右(Y字)に分岐します。右へ進めば上高地・乗鞍方面、左へ進めば奈川・野麦峠・木曽方面です。珍しいトンネルも体験して下さいね。
今回の散策に使った遊歩道マップです。
お問い合わせは、松本市観光情報センターへ
TEL 0263-39-7176
松本市大手3-8-13
松本市役所大手事務所1階
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